無口で神経質そうな少年・太郎が、ぼくの画塾へと連れられてきた。<br />太郎の父は画材会社を経営しているが、彼が描くのは電車やチューリップの絵ばかり。<br />人間が1枚も描かれていないスケッチブックに彼の孤独を見たぼくは……。<br />閉ざされた少年の心にそっとわけいり、いきいきとした感情を引き出すまでを緻密に描いた芥川賞受賞作「裸の王様」ほか3編。<br />世間を真摯なまなざしで切り取った、行動する作家・開高健の初期傑作集。<br />