「私は花火のことを考えていたのです。<br />我々の生のような花火のことを」秋の夜の鹿鳴館舞踏会で、露台に出たフランス海軍将校は明子に教えるような調子で言った。<br />……夜空に消える一閃の花火に人生の空しさを象徴させた名作「舞踏会」、ほのぼのとした小品「蜜柑」。<br />ほか「葱」「路上」「鼠小僧次郎吉」など大正8年度作品を収録。<br />