ひくく声をかけて、いきなり女に飛びかかった小平次は、恐ろしい力で首をしめあげ、すばやく短刀で心の臓を一突きに刺し通した。<br />その時、恐怖に引きつった青白い顔でじっとみつめる小女と顔を合わせてしまった。<br />「見られた……。<br />生かしてはおけない」男は江戸の暗黒街でならす名うての殺し屋で、今度の仕事は茶問屋の旦那の妾殺しだったのだ……。<br />色と欲につかれた江戸の闇に生きる男女の哀しい運命のあやを描いた傑作集。<br />