心をとらえた一枚の写真(ワン・シーン)が、僕の胸で、潮の香りにつつまれて一編の小説になる。<br />砂浜に並んで坐り、最後の夜を一緒に過ごした彼女。<br />オール・ブラックスに憧れて、チョコレート色の肌を汗のしずくで輝かせながら駆けていった少年。<br />失った恋の思い出に、一粒の涙をこぼしたあの娘。<br />汗も涙も思い出も、海からの熱い光で、少しだけ大人の色に変わる。<br />34編の恋の真空パック。<br />鮮やかな日々を描いた小説集。<br />