天正年間、戦乱の続くなか、出陣中の嫡男の留守を狙い、老将保科正俊の守る高遠城に、小笠原・上杉軍が攻め寄せる。<br />かつて武田信玄の下で槍弾正の異名をとった正俊も、すでに齢七十五の隠居の身。<br />だが、圧倒的に不利な状況下、城を棄てる意見を一喝し、正俊は奇策を練る―表題作「槍弾正の逆襲」をはじめ、関ケ原合戦における小早川秀秋の‘楯裏の裏切り’に抗した武将を描いた「松野主馬は動かず」など、独自の気概をもって生きた人間像を、あざやかに描く傑作歴史小説集。<br />