精神科医の榊は美貌の十七歳の少女・亜左美を患者として持つことになった。<br />亜左美は敏感に周囲の人間関係を読み取り、治療スタッフの心理をズタズタに振りまわす。<br />榊は「境界例」との疑いを強め、厳しい姿勢で対処しようと決めた。<br />しかし、女性臨床心理士である広瀬は「解離性同一性障害(DID)」の可能性を指摘し、榊と対立する。<br />正常と異常の境界とは、〈治す〉ということとはどういうことなのか? 七年の歳月をかけて、かつてない繊細さで描き出す、魂たちのささやき。<br />