昔の美貌を残しながらも無表情、徹底して人とのかかわりを好まなかった藍子叔母。<br />謎に満ちた叔母の人生に、わたしは物書きとしての興味をかきたてられた。<br />叔母に届いた手紙と、ある男の手記。<br />調べていくうちに、若き日の叔母の恋人は、ゾルゲ事件で投獄されていたことを知る。<br />戦中から戦後、そして現在へと、脈々と続く連鎖の不思議。<br />昭和という時代に翻弄されながらも、気丈に愛を貫き通した藍子――。<br />『症例A』の多島斗志之が描き切った、渾身の純愛小説。<br />