井野良吉は味のある役者として人気が出、映画出演も決まり幸先のよいことであったが、その幸運は、破滅へと近づくことでもあった(「顔」)。<br />出張先から帰らない夫の身を案ずる信子は、従弟の俊吉から思いもかけない‘夫の裏切り’を聞かされる(「白い闇」)。<br />平凡に穏やかに続く日常生活という仮面をはぎとると、欲にのまれた人間たちの罪と罰がみえてくる。<br />人間の深層心理を捉えたスリリングな恐怖推理小説集。<br />