「これを登るのか……」。<br />真正面にナンダ・コートの北壁が立ちはだかる。<br />悪絶な様相をみせる北壁は背筋が冷たくなるほどの凄みがある。<br />堅雪にピッケルを突き立て堀田隊長は息を呑んだ。<br />苦しんでいるのは他の隊員も同じだ。<br />極度の疲労、氷のように冷え切った体。<br />凍傷で手足の先が切り裂かれるように痛む。<br />猛吹雪、雪崩、病状の悪化、予想外の事態……。<br />栄光の頂上は近い――。<br />取材・構想10年、壮大な実話に基づいた日本山岳小説の大作！
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