左目が疼く――。<br />また、どこかで死霊が騒いどるんか。<br />妾として囲われていた男に日本刀で切り付けられ、左目と美しい容貌を失ったタミエ。<br />代償に手に入れたのは、暗い眼窩に映る禍々しい死者の影だった。<br />やがて「岡山市内に霊感女性現る」と新聞でも取り上げられ、タミエの元に怪しい依頼客たちが訪れるようになった。<br />隻眼の女霊媒師を主人公に、彼岸と此岸の間を体感する怪奇小説の白眉。<br />