もう男なんてこりごり、と思っていた。<br />憧れの彼から思いもかけない誘いがかかるまでは――。<br />甘やかな恋に陶酔していく歩美には、しかし過去のやましさが執拗に取り憑き、幸せに黒い染みを落としていくのだった……。<br />男と女のあわい恋心が、やがて大きなうねりとなって、静かな狂気へと変貌していく様を見事に描き出した表題作ほか2篇を含む、待望の短篇集!