「すべてを覚えている」理絵はそういった。<br />でも、僕たちはすべてを覚えていることなどできない。<br />すべては消えていく、墜ちていく──僕が巻き込まれた、数千億もの金が動くという闇金融の世界。<br />その暗がりから朧に立ち現れてくる、チョコレート・ケーキ、かみのけ座、殺人、奇妙な機械……触れてはいけないものによって優しく、そして残酷に侵食されていく現実の中で、僕がついに見出す‘本当の物語’とは?鬼才・稲生平太郎が放つ究極の幻想ミステリ。<br />