Fの記憶 ―中谷君と私―
誰も本当の名前を思い出せない、不思議な表情をしたただFと呼ばれるとらえどころのない少年。
あるシューズメーカーのお客様係に勤める35歳の容子は、不良品のクレームを会社が隠ぺいしようとしていることに気がつく。
自分はどうすべきか迷い、小学生の頃自分をかばってくれたFだったらどうするだろうと自問する。
高校で一番の悪だった悦史は、荒っぽい解体業を営む43歳の今も、昔リンチに遭わせたFの事を時々思い出す。
老舗の茶商で社長を務める41歳の有輔は、25年前淫蕩な母をナイフで刺し家出しようとしていた自分をそっと押しとどめたFの一言を思い出していた……。
目撃談のように語られるそれぞれの人生に立ち会ったFの記憶、それは今も深く心の奥底に生きている。
そして最終章で描かれるFの真の姿とは…? ミステリアスな構成から紡ぎだされる陰から光に、喪失から再生へ踏み出していく人の背中を押してくれる、美しい物語。
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