瀧本灯子には絵しかなかった。<br />小学一年生で美術教室に通い出してからは、寝食も忘れてアトリエで感情の赴くまま創作に打ち込む毎日。<br />そんな彼女の世界に南條遥都という少年が現れた。<br />自分にはない技術を持つ遥都を認め、次第に彼にだけは心を開きはじめる。<br />しかし嵐の夜、美大生になった二人のいるアトリエを土砂崩れが襲い――。<br />妬む人、託す人、助ける人、ともに歩む人。<br />二人の若き天才を取り巻く喜びと絶望を描いた、恋愛小説の名手による新時代の愛の物語。<br />