陽太郎の師、写真家の弘一には秘密の顔があった。<br />それは銀塩写真探偵という驚くべきもの。<br />ネガに写る世界に入り、過去を探れるというのだ。<br />入れるのはたった一度。<br />できるのは見ることだけ。<br />それでも過去に囚われた人が救いを求めてやってくる。<br />陽太郎も写真の中に足を踏み入れる。<br />見たのは、輝きも悲しみも刻まれた永遠の一瞬で──。<br />生きることとは、なにかを失っていくことなのかもしれない。<br />哀切と優しさが心を震わす物語。<br />