カリブ海の嵐
「ぼくはきみが憎い」マットの緑色の瞳がぎらりと光った。
「きみに、ぼくが味わったのと同じ苦しみを味わわせてやる」憎しみに満ちた義兄の言葉に、フランセスカは震えあがった。
ロンドンからはるばるカリブ海までやってきたのに、8年ぶりの邂逅はぞっとするほど残酷で、禍々しい。
フランセスカは、静かに悲しみにうち沈んだ。
8年前のあの夜、たしかに義兄と義妹は過ちを犯した。
だがあれはもう、過去の記憶に埋めたのではなかったのか。
フランセスカの脳裏に、15歳の禁断の夜がありありと甦った。
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