フォン・エスリン伯爵夫人の秘めご
伯爵未亡人アナ・フォン・エスリンは、ここ2年ほど独り寝をかこつ暮らしだった。
30代に入ったばかりで、まさに熟れた果実ともいうべき身体をもてあましているのは、ひとえにジェームズ・マッキアナンという憎らしい男のせいだ。
爵位も持たないくせに、科学技術者としてのし上がり、王室からも一目置かれる男。
彼は本気でアナを妻にと望み、舞踏会で、晩餐会で、彼女と顔を合わせる度に、誘惑の触手で絡めとろうとする。
二人の身分差などおかまいなしに。
そんな彼の傲慢さがいやでたまらないのに、ほかの男では満足できない。
悶々とするアナに、いとこのロバートが‘君がいちばん欲しがっているもの’を贈ってくれた。
それは究極の愛の技巧を持った‘理想の愛人’――。
ただし、目隠しをしていなければ会えない、謎の愛人だった。
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