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寵愛は熱く儚く

異国の君主は傲慢に口づけた。
‘妹の婚約者の愛人’の私に。
「僕の妹の婚約者には、二度と会わないと約束したまえ」王族らしい高慢さをたたえ、カシムは嘲るような口調で言った。
君のような女に妹の晴れ着を作らせるわけにはいかない、と。
カシムの妹のドレスを縫うことになっているアンジェリクは、内気ながらその美貌ゆえにありもしない男性遍歴を噂されていた。
私は彼の愛人じゃない――必死の抗弁は聞き入れられず、アンジェリクは気づくと力強い腕に抱きすくめられていた。
「もう話すことは何もない。
君の特技を見せてもらおうか」熱を帯びた褐色の瞳に絡めとられ、彼女は我知らず唇を開いた。
■目もくらむほどの喜びに、互いの立場を忘れるふたり。
秘めやかに熱い夜を重ねる一方、カシムの花嫁選びは着々と進んでいて……。
思いがけず禁断の恋に落ちた無垢な乙女の、儚く切ない愛の軌跡。




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