血潮の色に咲く花は
宿主にとっての『幸せ』とは――。
「花がどうやって子孫を残すか知っているか?」「受粉だろ。
雌しべに花粉がついて――」「そう……それが普通だ。
奇妙だと思わんか? あの宿主も、花は花だ。
だが奴らは独力で花を咲かせ、他所から何かが入った気配もないのに、やがて種子を生み出す」 黒服に言われるまで、ルッカは考えたこともなかった。
『花』はそういうものだから、と思ってそれで納得してしまっていたのだ。
「有性生殖する生物は、遺伝子を混ぜることで、一つの種の中にも多様性を生み出している。
皆が同じ弱点を持っていては簡単に滅びるからだ。
事実、宿主も個々の能力に差異があり、特異的な能力を得た個体とて、稀にだが確認されている」 そこまで言って、黒服は鋭く目を細めた。
「仮に、奴らが無性生殖で増えているとしよう。
何かがあるはずだ。
生物としての弱点を補う、何らかのカラクリが……」ルッカは以前黒服との会話を思い出した。
どうして今その話を思い出したのか。
それはリディの生まれた地でルッカの目の前に、リディと同じ真紅の花を咲かせた宿主が現れたからであった――。
花のために生きる宿主の少女と宿主のために生きる青年の物語、第二巻。
※この作品は底本と同じクオリティのカラーイラスト、モノクロの挿絵イラストが収録されています。
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