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カクリヨの短い歌

和歌の世界で交錯しあう複雑な人間模様――。
「梅は咲いたか、桜はまだかいな……」 春風に漂う白檀の香りを味わうように目を閉じ、真晴は笑った。
どこか血の臭いが似合うような、凄惨な笑みだった。
「待ちに待った季節。
せいぜい艶やかに咲いて、気が向いたら散ってやるさ」 桜は咲いて散るものだと信じていた。
ひと思いに散ることもできずに枯れ死ぬことがあるとは、思っていなかった。
とある仏像を狙う孤高の天才歌人・帳ノ宮真晴と、彼女を狙う若き歌詠み――椿市と振根。
そこへ祝園完道を加えた各人の思惑が「鎮花祭」で交錯する。
三十一文字を巡る物語・第三章、桜は咲いて散るものだと信じていた………。
※この作品は底本と同じクオリティのカラーイラスト、モノクロの挿絵イラストが収録されています。




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