ほんとうに誰もセックスしなかった夜
至純の愛を描く心ふるえる恋愛小説。
物語は、十年前の展覧会場から始まる。
画家の卵である主人公は、そこで初めて「わたしだけの神様」に出会う。
二十歳以上年上の彼は額縁職人だった。
すぐに〈わたしたち〉は愛しあう。
でも、恋は一年しかつづかなかった。
そして十年後の再会。
〈わたし〉は高校の美術教師になっている。
三十八歳。
再会はホテルの一室だった。
そこでの優しくて官能的な性描写は、ため息が出るほど美しく、嘆賞に価する。
〈わたし〉が唯一気に入っている自作の絵は「夜の街なみ」を描いた風景画だ。
「夜の風景は、いかなる光を浴びせられても夜のままなので安定しているし、すべての色を使うには昼よりも夜のほうが描ききれると、わたしは考えている」。
その絵を見た高校生の教え子たちはこう感想を述べる――「誰も愛しあわなかった夜みたい」「愛しあうって、どういうこと?」「セックスだろう」「誰もセックスしなかった夜みたい」物語は、〈わたしだけの神様〉の死、感動的な終結に向かって静かに穏やかにながれていく。
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