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遠ざかる家

人生という「なぞなぞ」に正解はあるのか?語り手は、一人暮らしを続ける四十七歳歯科医・和也。
実家の父親の看病を名目に妻は不在、大学生になる二人の息子も家を出ている。
三歳になるアメリカン・ショートヘアと自適の生活を続けていたが、NHKに勤務する兄・靖彦がアルコール依存症のため緊急入院したことから、物語は動き出す。
記憶のなかに留まる、ゼラニウムを描いた一枚の油絵を発端に、入院先の病室から問わず語りに幼少期の記憶を紐解いていく兄。
やがて、その絵は、彼ら兄弟の亡き父が描いたものであることへと逢着する。
そして、ゼラニウムとともにその絵に描かれていた少女は、戦時中に五歳で亡くなった叔母であった。
同じく五歳で亡くなった彼らの妹と同じ、明子という名の――。
物語終盤。
愛娘を過剰に守ろうとするあまり、兄・靖彦は心を乱し、自身の家族を軟禁しての先の見えない小旅行へと事態は発展する。
兄の行方を突き詰め、対話を試みる和也。
そのなかで、和也は、無自覚にひた隠してきた自身の持つ生の不全感のルーツに思い至る。




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