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臨床の砦

緊急出版!「神様のカルテ」著者、最新作。
「この戦、負けますね」 敷島寛治は、コロナ診療の最前線に立つ信濃山病院の内科医である。
一年近くコロナ診療を続けてきたが、令和二年年末から目に見えて感染者が増え始め、酸素化の悪い患者が数多く出てきている。
医療従事者たちは、この一年、誰もまともに休みを取れていない。
世間では「医療崩壊」寸前と言われているが、現場の印象は「医療壊滅」だ。
ベッド数の満床が続き、一般患者の診療にも支障を来すなか、病院は、異様な雰囲気に包まれていた。
「対応が困難だから、患者を断りますか? 病棟が満床だから拒絶すべきですか? 残念ながら、現時点では当院以外に、コロナ患者を受け入れる準備が整っている病院はありません。
筑摩野中央を除けば、この一帯にあるすべての病院が、コロナ患者と聞いただけで当院に送り込んでいるのが現実です。
ここは、いくらでも代わりの病院がある大都市とは違うのです。
当院が拒否すれば、患者に行き場はありません。
それでも我々は拒否すべきだと思うのですか?」――本文より。
(2021年4月発行作品)




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