親子鷹十手日和
魚菜には包丁を揮い、悪党には剣を振るう!かつて、「詰碁同心」と呼ばれ、町奉行所の定廻りとして捕物に辣腕を振るった谷岡祥兵衛は、いまでは妻の紫乃とふたり、隠居に暮らす身だ。
若い頃に食いしん坊同士で意気投合、夫婦になってから幾年月。
健やかに生まれ、馬鹿正直に育った息子の誠四郎に家督を譲り、気の利いた美しい春霞を嫁に迎え、気楽な余生を過ごしている。
今日も近所の子たちに書を教えたり、玩具を作ったりしていると、誠四郎が探索の相談にやって来た。
駒込で旅道具を売る〈笠の屋〉の主人・弥平が殺されたというのだ。
框に倒れていた亡骸の腹に突き立っていたのは、凶器として珍しいと言える剪定鋏。
そして盗まれたのは、たったの一両だけらしい。
娘の佐代によれば、いつも袱紗に二十両を包んで、茶箪笥の抽斗に入れていたが、十九両が残っているというのだが――。
不可解な事件に父子で立ち向かう、篤い人情の通う、書き下ろし連作捕物帖。
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