〈誰もいなくなった染色工房に、秒針の音だけが響いていた。<br />細い筆先に青い花液を含ませる。<br />すでに色挿しされた色留め袖の図柄の‘ある’部分に、花筏に乗ったくちなしの花を描き加える。<br />これをやらなければ私が殺人犯にされてしまう…〉古都・金沢、歴史を誇る加賀友禅の工房を舞台に、姿を見せぬ真犯人と対峙する女の愛憎の果てを描く長編推理!