店を開くも失敗、交通事故死した調理師だった父。<br />女手ひとつ、学食で働きながら東京の私大に進ませてくれた母。<br />―その母が急死した。<br />柏木聖輔は二十歳の秋、たった一人になった。<br />全財産は百五十万円、奨学金を返せる自信はなく、大学は中退。<br />仕事を探さなければと思いつつ、動き出せない日々が続いた。<br />そんなある日、空腹に負けて吸い寄せられた商店街の惣菜屋で、買おうとしていた最後のコロッケを見知らぬお婆さんに譲った。<br />それが運命を変えるとも知らずに……。<br />