昨年、夫の孝之が事故死した。<br />まるで二年前に他界した義母佳子の魂の緒に搦め捕られたように。<br />血縁のない母を「佳子さん」と呼び、他人行儀な態度を崩さなかった夫。<br />その遺品を整理するうち、私は小さな桐箱の中に乳児の骨を見つける。<br />夫の死は本当に事故だったのか、その骨は誰の子のものなのか。<br />猜疑心に囚われた私は……。<br />(『夫の骨』)家族の‘軋み’を鋭く捉えた九編。<br />