六郎は犬を飼っていた。<br />名前はシロという。<br />シロはいつも家の中にいて、六郎の帰りを待っている。<br />大きく濡れた黒い瞳はなにも映していないかのように無機質だが、擦り寄ってくる姿は可愛い。<br />なにがあってもシロの真っ黒な瞳を見るだけで安らげる。<br />シロは六郎の生きる支え、この世の中でシロだけが、六郎のモノだ。<br />いや、六郎が、シロのモノなのかもしれない。<br />