終戦時の首相鈴木貫太郎の夫人は札幌農学校二期生足立元太郎の長女たか(札幌生まれ)で、十年にわたり幼い昭和天皇の養育掛をつとめていた。<br />また貫太郎は瀕死の重傷を負った二・二六事件当時、天皇の侍従長であった。<br />夫妻はそれぞれ‘親代わり’として天皇に仕えた希有な体験者である。<br />天皇と夫妻の心の交流、その背景にあるクラークの教えを守った初期札幌農学校生たちの信仰。<br />わが国近代史の一断面を北海道からの視点で描く力作。<br />