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水の苺

現代農業の最先端である植物工場に魅せられた拓郎とひとみは、北海道の片田舎で苺の水耕栽培をスタートさせた。
二人が就農した豊咲町は、土で育てる土耕栽培によるブランド苺『豊咲苺』の言わずと知れた産地で、対極の栽培法に当たる水耕栽培は、周囲に受け入れられるはずはなかった。
苺部会、青年部長の順一が二人をののしった。
「豊咲の苺は土で育った苺でブランドを築き上げてきた。
土でなければ本当の苺の味がしない。
水の苺なんて苺じゃない!」二人の苺は『ニセ豊咲苺』と揶揄され出荷先は見付からず、苺農家との溝は深まる一方だった。
そしていよいよ収穫を迎えようとしていた直前の事、初物苺を食べたひとみが病院に運ばれた。
何者かが水耕栽培の水に毒物を混入させたに違いない。
汚染された水はビニールハウスを循環していたので、苺は全量廃棄を命じられ、今後の経営に暗雲が垂れこめる。
そればかりか風評が飛び交い、歴史ある豊咲のブランド苺までが窮地に立たされるのだった。
一体誰が……何故……




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