とかげは眠る前、鼻づらを私の胸に強く押し付ける癖がある。<br />デリバリーのピザが好きで、人と話すのは苦手だ。<br />三年の交際期間を経て私がプロポーズしたある夜、とかげは言った。<br />「実は、私子供のころ目が見えなかったことがあるの」。<br />そして明かされる、家族を襲った惨劇と呪いーー。<br />それぞれに傷を抱え、宿命的にひかれあった二人が見つけたのは、今は微かだけれど確かな希望。<br />表題作「とかげ」始め、とまどいながら生きる人たちを優しく励ましてくれる6編の短編小説集。<br />