「つくっても売れ残るだけだから」嘉永三年の早春、谷中・感応寺の門前町の一角に見世びらきして二月、「甘味処 はつねや」の門出は大雪で挫かれた上、前途多難。<br />おかみのおはつは近くの老舗・伊勢屋に意地悪され亭主の音松は苦笑いするばかりだった。<br />食べるのが惜しくなる音松の菓子と若い夫婦の奮闘、仲間の人情で多幸感に包まれる時代小説。<br />