嘉永三年(一八五〇)南部藩――遠野。<br />城下に住まう軽輩の外川市五郎は、出世や武道よりも絵を描くことを好む、風変わりで孤独な青年。<br />ふと見かけた深紅の山百合との再会を求めて迷い込んだ山村で、彼は座敷童のような少女・桂香と邂逅する。<br />二人の交流が、死者を祝ぎ葬送する板絵――供養絵額を生み出していく。<br />