黄昏の東京――。<br />鞠谷雛子は、周防馨は、電柱の陰の、交差点の向こうの、ふとした廃墟の様相に‘死者’を見る。<br />東京の街で‘死者’が増殖し始めたのは、CRISISのヴォーカリストにして両性具有と噂された、美しくも妖しいチェシャが自殺してからのこと。<br />‘死者’たちが引き起こす恐怖は臨界へと達し、やがて世界はあまりにも絶望的な相貌を見せ始める――前世紀末、読書界を震撼させた津原泰水の更始作、ついに復刊。<br />