and I Love Her
1人の女性がいる。
この小説は、彼女の輪郭と所作だけを丁寧に追ったものだ。
彼女がどんな部屋に住み、どうやってコーヒーを飲み、クーペを運転し、どのように眠り、バルコニーにいる時の様子や風を受けた時の表情などが、積み重ねられていく。
彼女には雨と月の光がよく似合う。
小説とは、ドラマや事件、葛藤とその克服、といった起伏が必要だ、という思い込みを、この作品はワイパーできれいに払拭する。
それも、長篇と読んで差し支えない長さを擁して。
1点、注意を。
「あとがき」は絶対に先に読まないこと。
【著者】片岡義男1939年東京生まれ。
早稲田大学在学中にコラムの執筆や翻訳を始め、74年『白い波の荒野へ』で作家デビュー。
75年『スローなブギにしてくれ』で野生時代新人賞を受賞。
ほか代表作に『ロンサム・カウボーイ』『ボビーに首ったけ』『彼のオートバイ、彼女の島』など多数。
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