真昼のプリニウス
山は頼子に対して、すべての人間に対して、完全に無関心だった。
この世界は何でできているのか。
強烈な好奇心につき動かされた古代ローマのプリニウスはヴェスヴィアスの噴火の調査に向かい命を落とした。
現代の火山学者頼子は自然の現象を科学的に分析しながら、自らの内なる自然に耳を澄ます。
あるきっかけから彼女はひとり浅間山の火口に向かう。
この世界を全身で感知したいという思いにかられて。
人は自然の脅威とどのように折り合いをつけるのか。
言葉はこの世界を語りきることができるのか。
「池澤夏樹のいわば本質的な思考と感性が、比較的直接に姿をあらわしている重要な作品」(日野啓三による中公文庫解説より)【著者】池澤夏樹:1945年、北海道帯広市生まれ。
小学校から後は東京育ち。
以後旅を重ね、三年をギリシャで、十年を沖縄で、五年をフランスで過ごし、今は札幌在住。
1987年に『スティル・ライフ』で芥川賞を受賞。
その後の作品に『マシアス・ギリの失脚』『静かな大地』『カデナ』など。
東日本大震災に際しては被災地を度々訪れ、その思いを綴った『春を恨んだりはしない』や、長篇小説『双頭の船』『アトミック・ボックス』を発表。
2014年末より「池澤夏樹=個人編集 日本文学全集」の刊行を開始。
http://www.impala.jp
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