ほぼ完璧な情事
われわれが「現実」と呼んでいる何がしかの出来事を言葉で作り上げる。
言うまでもなく、小説は言葉でできている。
恋愛小説だって、小説である以上、やっぱり言葉でできているはずだ。
そしてこの短編小説は、まだ起きていない情事を男女2人の会話によって言葉で構築する。
そもそも言葉で出来上がっている小説の中で未遂の行為、あるいはやらないかもしれない行為を言葉で造型する、という二重の構造をこの小説は持っている。
そして読者はこう思うかもしれない。
いや、ここにある会話の言葉たちは現実の前哨戦ではなく、すでにそれ自体がじゅうぶんな現実である、と。
【著者】片岡義男1939年東京生まれ。
早稲田大学在学中にコラムの執筆や翻訳を始め、74年『白い波の荒野へ』で作家デビュー。
75年『スローなブギにしてくれ』で野生時代新人賞を受賞。
ほか代表作に『ロンサム・カウボーイ』『ボビーに首ったけ』『彼のオートバイ、彼女の島』など多数。
http://kataokayoshio.com/
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