スプーン一杯の月の光
父を「あなた」と呼ぶ娘が差し出す、スプーン一杯の光不思議な短編である。
不安定の中に一時的にできたエアポケット、あるいは台風の眼、のようにも見えるし、案外、これはこれでゆるぎない安定のようにも見える。
高原のコテージに複数の夫婦が集まり、その中で最も落ち着いているのは14歳の少女であるように見える。
彼女が「あなた」と呼ぶ男との関係はこのあと果たしてどうなるのか、それはわからない。
お気に入りの紅茶を淹れ、スプーンに「ほら」とばかり月を映してみせる14歳の心の中は誰にも予測できない。
【著者】片岡義男1939年東京生まれ。
早稲田大学在学中にコラムの執筆や翻訳を始め、74年『白い波の荒野へ』で作家デビュー。
75年『スローなブギにしてくれ』で野生時代新人賞を受賞。
ほか代表作に『ロンサム・カウボーイ』『ボビーに首ったけ』『彼のオートバイ、彼女の島』など多数。
http://kataokayoshio.com/
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