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クロイドン発12時30分

チャールズは切羽詰まっていた。
父から受け継いだ会社は不況のあおりで左前、恋しいユナは落ちぶれた男の許へ来てはくれまい。
母の弟アンドルーに援助を乞うも、駄目な甥の烙印を押されるばかり。
チャールズは考えた。
叔父の命か、自分と従業員全員の命か。
これは「無用な一つの命」対「有用な多くの命」の問題だ。
我が身の安全を図りつつ遺産を受け取るには――念入りに計画を立て、実行に移すチャールズ。
快哉を叫んだのも束の間、フレンチ警部という名の暗雲が漂い始める。
計画はどこから破綻したのか。
『樽』と並ぶクロフツの代表作、新訳決定版。
/解説=神命明




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