深川の花街、大黒で行き倒れていた醜女。<br />妓楼たつみ屋に住む絵師の歌に拾われた彼女は、「猿」と名付けられ、見世の料理番になる。<br />元々厨房を任されていた男に、髪結、化粧師、門番、遣手婆……この大黒にかかわる人々は皆、何かしらの事情を抱えている。<br />もちろん、歌も。<br />そんな花街も、猿がやってきたことをきっかけに、少しずつ、しかし確かに変化していく――