桜月夜に
開業医の父と母の仲が険悪になり、祖母の家に連れられてきたぼく。
夢と現実の間を彷徨うぼくの耳に入ってくる、不思議な歌声。
そして、高窓の外で踊る手鞠。
「ほんとに悲しいと、からだじゅうが痛いんだよ」。
「〈よくない〉ことはないんだよ。
してしまったことには」。
祖母の言葉は、ぼくの心に染みる。
「泣いて涙は どこへゆく」祖母が唄うと、「泣いて涙は 舟に積む」と歌声が帰った。
そのときぼくは、高窓の向こうは仏壇の中なのだということを知る。
手鞠歌から始まる幻想奇譚。
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