モイラは美しい悪魔だ。<br />生まれ持った天使の美貌、無意識の媚態、皮膚から放つ香気。<br />薔薇の蜜で男達を次々と溺れ死なせながら、彼女自身は無垢な子供であり続ける。<br />この恐るべき可憐なけものが棲むのは、父親と二人の濃密な愛の部屋だった……。<br />大正時代を背景に、宝石のような言葉で紡がれたロマネスク。<br />三島由紀夫が「官能的傑作」と驚嘆した一大長編。<br />