飛田の旅館に出入りする私は、かつて亭主といきさつのあった娼婦・芳子と一晩をともにするが、そこで泥沼から這い上がろうとする女の狂おしくも悲しい復讐心にふれ――(「飛田残月」)。<br />過去を秘めながら雑草のように身を寄せ合い生きる娼館の女たち。<br />水面下で互いを守ろうとする静かな想いの正体は……(「雑草の宿」)。<br />酷薄さとやさしさの溶けあう筆致で淪落の者たちへの愛を描き切った、直木賞作家による傑作8篇。<br />