少年たちの心の揺れをみずみずしく軽やかに描いた作品。<br />淡い初恋、大人の男女間に流れる波紋、出会いそして別れの予感。<br />――ちょうど同じ時間、兄の中子充は安直な片思いの恋に落ちようとしていた。<br />(中略)思いがけず川並由佳が振り返って自分を見ていた。<br />川並由佳が自分の名前を知っていた。<br />知っていたばかりか、彼女の方から中子君と呼びかけてきた。<br />たったこれだけのことで、充の片思いは始まったのだ。<br />――本文より