デートの経験もある。<br />男と寝たこともある、一度きりだけど。<br />二十五歳の二宮風吹(にのみやふぶき)は「必死」が苦手。<br />恋に餓えた顔を晒(さら)すぐらいなら地味で結構。<br />そんな私が一目惚れするなんて。<br />鍵屋の若旦那を想う気怠(けだる)く、もどかしい日々。<br />攻め手が分からない。<br />そんなときアパートの大家が言った――「好かれようとしないことよ」。<br />