「藪入りには帰っておいで。<br />待ってるからね」母の言葉を胸に刻み、料理茶屋「橘屋」へ奉公に出たおふく。<br />下働きを始めたおふくを、仲居頭のお多代は厳しく躾ける。<br />涙を堪えながら立ち働く少女の内には、幼馴染の正次(しょうじ)にかけられたある言葉があったが――。<br />江戸深川に生きる庶民の哀しみと矜持を描いた人情絵巻。<br />