周也だけがたったひとつ、私のもの――施設育ちの芳子と周也は、実の姉弟のように生きてきた。<br />仕事が続かぬ周也を常に優しく受け入れる芳子。<br />芳子にはわかっていた。<br />周也を甘やかし、他人から受け入れられないことを受け入れられないほど駄目にしてきたのは自分だということを。<br />そして周也がある罪を犯したとき、芳子は二人でもう戻れない選択をする――幸福に向かっているのか。<br />絶望に向かっているのか。<br />直木賞作家の意欲作!