マイホームができてみると、設計図の書斎は子供部屋に化けていた。<br />桐原は怒った。<br />妻や義母から逃避する書斎こそ、夢にまで見た男の城ではないか。<br />そしてやっと手に入れた書斎は廊下脇の貧相な部屋。<br />それでも桐原の心のなかでは大書斎なのだ――。<br />女臭ふんぷんたる当世マイホームの中で、けなげに生きる男たちを絶妙な語り口で描く傑作集。<br />