遠い先ばかり見つめていた父は、絶望している。<br />堅実な実際家の母は、希望をかけている。<br />父と母の半生を中心に、複雑な一族の系譜を私小説作家が揺るぎなく描ききった長篇小説。<br />新たに発見された、著者の手の入った原稿で野口冨士男の処女作ともいえる作品を七十余年の時を経て、初文庫化。<br />