下士上がりで執政に昇り詰めた桐谷主水。<br />執政となり初登城した日から、忌まわしい事件が蒸し返され、人生は暗転する。<br />己は友を見捨て出世した卑怯者なのか。<br />三十半ばにして娶った妻・由布は、己の手で介錯した親友の娘だった。<br />自らの手で介錯した親友の息子・喬之助が仇討ちに現れて窮地に至る主水。<br />事件の鍵となる不可解な落書の真相とは――武士の挫折と再生を切々と訴える傑作。<br />